「改正相続法紹介」1

2018.12.04 更新

平成30年7月6日,民法及び家事事件手続法の一部を改正する法律(平成30年法律第72号)が成立しました(同年7月13日公布)。

民法のうち相続法の分野については,昭和55年以来,実質的に大きな見直しはされてきませんでしたが,その間にも,社会の高齢化が更に進展し,相続開始時における配偶者の年齢も相対的に高齢化しているため,その保護の必要性が高まっていました。

今回の相続法の見直しは,このような社会経済情勢の変化に対応するものであり,残された配偶者の生活に配慮する等の観点から,配偶者の居住の権利を保護するための方策等が盛り込まれています。このほかにも,遺言の利用を促進し,相続をめぐる紛争を防止する等の観点から,自筆証書遺言の方式を緩和するなど,多岐にわたる改正項目を盛り込んでおります。(法務省ホームページより)

 

第1 遺産制度に関する見直し

1.自筆証書遺言の方式緩和

民法は,遺言の方式について,第960条で「遺言は,民法に定める方式に従わなければすることができない。」としており,遺言の厳格性及び要式性に基づいて,決められた方式に従わなければ,せっかくの遺言も効力が発生しないことになってしまいます。

遺言の方式に厳格性が要求されている理由は,遺言者の真意を確保すると共に,遺言をめぐる紛争と遺言書の偽造,変造を未然に防止するためです。

反面,本来遺言自由の原則があり,さらに,一般国民に,遺言の方式についての法的知識が十分浸透しているとは言い難い状況を考慮すると,民法の規定している遺言の厳格性を追求しすぎると,かえって混乱を招きかねません。

そこで,このたびの民法改正では,自筆証書遺言の方式緩和の条文が盛り込まれました。

 

改正前の法律

 

 

 

 

《新旧条文対照表1》