弁護士大脇通孝の「知っておきたい最新判例紹介」

2017.05.08 更新

最高裁判所平成29年1月31日第3小法廷判決
相続税の節税のための養子縁組は、有効かそれとも無効か。

自分の孫を養子にする場合,①相続人を増やすことによる相続税の節税,②親から子,子から孫へと2度にわたる相続税の課税を一度にする,という目的で行われることがあります。
これを節税養子とか相続税養子と呼んでおり,家庭裁判所の許可は不要とされます(民法798条ただし書)が,民法802条1号は,「当事者間に縁組をする意思がないとき」は,養子縁組みは無効とするとしますので,このような相続税の節約目的のための養子縁組は,果たして,有効なのか無効なのかが問題となります。
この問題について,最高裁平成29年1月31日第3小法廷判決(平成28年(受)第1255号養子縁組無効確認請求事件)は,「相続税の節税のために養子縁組をすることは,(相続税法による)節税効果を発生させることを動機として養子縁組をするものにほかならず,相続税の節税の動機と縁組をする意思とは,併存し得るものである」と述べ,「専ら相続税の節税のために養子縁組をする場合であっても,直ちに当該養子縁組について民法802条1号にいう『当事者間に縁組をする意思がないときに』当たるということはできない。」としました。
節税目的であっても養子縁組の意思がなければ,養子縁組は無効ですから,この判例から,節税目的の養子縁組は全て認められると早合点をしてはいけません。
未成年養子の場合,養親は養子を監護養育する義務がありますので,本当のそのような親子関係を創設する意思があるかどうかが重要な判断要素となります。ただ単に,相続税の負担を減らす便法として,養子縁組を仮装したような場合には,養子縁組の意思を欠き,縁組は認められないと思われます。
なお,相続税法上は,基礎控除額の算定の際に,カウントされる養子の数は,実子が入れば1人,実子がなくても2人までに限定されており(相続税法15条2項),また,その限定内の人数であっても,相続税の負担を不当に減少させる結果となると認められる場合には,税務署長は,その養子の数をその遺産に係る基礎控除額算定上の相続人の数に算入しないことができるとされます(同法63条)。

http://www.courts.go.jp (裁判所ウエブサイト)