「民法改正紹介4」

2017.08.30 更新

法定利率

1 現行民法では、利息を生ずべき債権について別段の意思表示がないときは、その利率は、年5%と定められています(現行民法404条)。これを「法定利率」といいます。
また、民法の特別法に当たる商法では、商行為によって生じた債務に関して、法定利率は、年6%と定められており(商法514条)、企業との取引によって生じた債務の法定利率は民法よりも高いものとなっています。
現代では、多くの取引について契約で利率について別段の取り決めがされており、そちらが優先することも多いですが、契約で特に利率について取り決めがなされていない場合には、法定利率が適用されることになります。
しかし、低金利状態が続いている現在の経済情勢下では、年5%という利率は高すぎることから、法定利率を引き下げ、経済情勢の変動に応じて法定利率を変更する変動制とすることになりました。

2 改正民法では、一先ず法定利率は年3%に引き下げられています(改正民法404条2項)。
そして、法定利率は、今後3年を1期として、1期ごとに見直し行われることになります(改正民法404条3項)。
そうすると、最短3年ごとに法定利率が変動する可能性がありますので、債権ごとにどの法定利率が適用されるかの見極めが必要になります。この点について、別段の取り決めが無いときの利率は、その利息が生じた最初の時点における法定利率によるとされており、いったん利息が生じてしまえば利率は固定化されることとなっています(改正民法404条1項)。
なお、商法で定められていた年6%の法定利率は、廃止されますので、契約で定められていない場合の利率は、改正民法で定められる利率に一本化されることになります。

3 ところで、交通事故等の不法行為等によって他人の権利等を侵害した者は、そのために相手方に生じた損害を賠償する責任を負います。
そして、この損害には将来得られたであろう利益が失われたことによる損害(「逸失利益」といいます。)が含まれることがあります。例えば、交通事故により後遺障害が生じた場合に将来の労働能力が一部又は全部失われたことによって発生する収入減などです。
このような逸失利益については、本来の利益発生時期以前に全額賠償するという計算になりますので、賠償を受ける者は、その後、本来の利益発生時期までの運用で利息分の利益を別途得ることが可能となってしまいます。それは、被害者・加害者の当事者間の公平に反しますので、逸失利益の現在価値の計算のために、将来その利益を取得すべき時までの利息相当額を損害賠償の額から控除する必要があります。これを「中間利息控除」といい、裁判実務では中間利息控除の計算に年5%の法定利率を用いていました。
改正民法では、従前の損害賠償実務を反映して、中間利息控除は損害賠償請求権が生じた時点における法定利率によって行うことが明文化されています(改正民法417条の2)。
そうしますと、法定利率が5%から3%に下がることによって中間利息控除額が減少し、現在と比べて今後の逸失利益の算定額は上がるという関係になりますので、賠償額が増加して損害賠償実務に影響が出る可能性があります。