「改正相続法紹介」3

2019.01.21 更新

3.法務局における自筆証書遺言の保管制度の創設(遺言書保管法)

自筆証書遺言は,誰にも知られず,いつでも手軽に自由に作成することができ,変更や書き直しも簡単にできます。その反面,遺言の厳格性要式性のために,せっかく書いた遺言が無効になってしまったり,遺言書は,自宅で保管するケースが多いと考えられるところ,遺言者自身がその保管場所を忘れてしまったり,親族ら関係者が発見し勝手に隠匿・破棄してしまったりすることも想定されます。

また,遺言者が死亡後,相続人等は,家庭裁判所において,当該自筆証書遺言の「検認」という証拠保全手続を取らなければなりません。「検認」を受けていない遺言書は無効ではありませんが,金融機関の手続等,さまざまな手続の際に支障が生じてしまいます。

このような危惧を補い,遺言者の最終意思の実現と相続手続の円滑化を図るため,法務局における遺言書の保管等に関する法律(以下「遺言書保管法」といいます。)が成立し,平成30年7月13日公布されました。

遺言書保管法は,高齢化の進展等の社会経済情勢の変化に鑑み,相続をめぐる紛争を防止するという観点から,法務局において自筆証書遺言に係る遺言書を保管する制度を新たに設けるものです(法務省ホームページより)。

遺言書保管法の施行期日は,今後政令で定められることになりますが,公布の日から2年以内に施行されることとされており,施行前には,法務局に対して遺言書の保管を申請することはできませんので,ご注意ください(法務省ホームページより)。

 

遺言書保管法 概要(法務省ホームページより)

1 遺言書を書いて,遺言者自身(本人確認あり)が自ら出頭して,保管の申請をします。

保管の申請の対象となるのは,民法第968条の自筆証書によってした遺言(自筆証書遺言)に係る遺言書のみです(第1条)。また,遺言書は,封のされていない法務省令で定める様式に従って作成されたものでなければなりません(第4条第2項)。

したがって,法務局側が,申請時に,民法第968条の定める適合性を外形的に確認し,当該遺言書に,明らかに形式的な不備がある場合には指摘されることになります。

遺言書の保管の申請は,遺言者が遺言書保管所に自ら出頭して行わなければなりません。その際,遺言書保管官は,申請人が本人であるかどうかの確認をします(第4条第6項,第5条)。

 

2 管轄する法務局に申請をします。

遺言書の保管の申請は,①遺言者の住所地②本籍地③遺言者が所有する不動産の所在地を管轄する遺言書保管所の遺言書保管官(法務局)に対してすることができます(第4条第3項)。

 

3 遺言書保管官による遺言書の保管及び情報の管理

保管の申請がされた遺言書については,遺言書保管官が,遺言書保管所の施設内において原本を保管するとともに,その画像情報等の遺言書に係る情報を管理することとなります(第6条第1項,第7条第1項)。

 

4 遺言者による遺言書の閲覧,保管の申請の撤回をすることができます。

遺言者は,保管されている遺言書について,その閲覧を請求することができ,また,遺言書の保管の申請を撤回することができます(第6条,第8条)。保管の申請が撤回されると,遺言書保管官は,遺言者に遺言書を返還するとともに遺言書に係る情報を消去します(第8条第4項)。

遺言者の生存中は,遺言者以外の方は,遺言書の閲覧等を行うことはできません。

 

5 遺言者の死亡後,遺言書の保管の有無の照会及び相続人等による証明書の請求等ができます。

特定の死亡している者について,自己(請求者)が相続人,受遺者等となっている遺言書(関係遺言書)が遺言書保管所に保管されているかどうかを証明した書面(遺言書保管事実証明書)の交付を請求することができます(第10条)。

遺言者の相続人,受遺者等は,遺言者の死亡後,遺言書の画像情報等を用いた証明書(遺言書情報証明書)の交付請求及び遺言書原本の閲覧請求をすることができます(第9条)。

遺言書保管官は,遺言書情報証明書を交付し又は相続人等に遺言書の閲覧をさせたときは,速やかに,当該遺言書を保管している旨を遺言者の相続人,受遺者及び遺言執行者に通知します(第9条第5項)。

 

6 遺言書検認の必要がありません。

遺言書保管所に保管されている遺言書については, 遺言書の検認(民法第1004条第1項)の規定は,適用されません(第11条)。

 

7 申請には,手数料が必要です。

遺言書の保管の申請,遺言書の閲覧請求,遺言書情報証明書又は遺言書保管事実証明書の交付の請求をするには,手数料を納める必要があります。(第12条)

遺言書保管法のその他の資料は,以下のとおりです。

概要[PDF:409KB]

法律[PDF:160KB]

遺言保管法の概要については,以下のページもご参照ください。
法務局における遺言書の保管等に関する法律について